人獣共通細菌感染症研究グループは、微生物病研究所・附属感染症国際研究センター内の研究室として、2023年9月に発足しました。私たちは研究室名のとおり人獣共通感染症(動物由来感染症)を起こす病原細菌を研究対象にしています。新たに出現する感染症(新興感染症)に対する対策が世界的な課題として重要視されていますが、こうした新興感染症のほとんどはもともと動物が保有している微生物が原因となっています。現在、COVID-19の流行もあってウイルス研究が注目されがちですが、人獣感染症を起こす病原体には細菌や寄生虫もあります。今後どのような感染症がまた社会の脅威となるのか、そうした将来への備えとして、今はあまり顧みられていない病原体研究も進めておくことが必要です。
細菌はわずか数ミクロンの微生物ですが、時にまるで意思をもっているかのように宿主内で巧みな生存戦略をとります。そして、さまざまな因子を産生して宿主に影響を与えます。そうした菌由来因子の分子機構を明らかにすることで、ときに細菌の「意思」が垣間見えることがあります。私は、細菌学研究を通してこうした場面に出会う度に驚き、わくわくし、その興奮を味わいたいがために、研究の世界に身を置いています。研究をしていると思うような結果がでないことももちろんありますが、実験条件を何度も練り直し、試行錯誤の果てに自分の立てた仮説やアイデアを実証できたときの達成感は他では得られないものがあります。とにかく研究の世界にどっぷり浸かり、思う存分愉しんでみたいという方、医学、農学、理学など出身やバックグラウンドは問いません。まずは見学にいらしてください。いつでも大歓迎です。
2024年2月
大阪大学 微生物病研究所
人獣共通細菌感染症研究グループ
塚本 健太郎